みんなの記事 いづき 2017-06-14 12:46
どうしてこうなった…少女マンガの枠を大きく外れた異色作たち

はじめまして。普段「おとよめ」というブログで女性向けマンガのレビューを書いてます、いづきと申します。男性です。


Webマンガの登場により、発表媒体の数が爆発的に増え、群雄割拠の様相を呈してきている昨今。

そんな中で注目を集めるためには、いかに他にない設定やキャラクターを登場させるかが一つのポイント。

様々な漫画家さんが、オンリーワンを目指して様々な工夫を施し、世に作品を送り続けています。

しかし、時にはその工夫が行き過ぎてしまい「そんなのアリなの!?」と困惑してしまうような作品が誕生することも。


今回は少女マンガで、そんな行き過ぎたオンリーワンの作品たちを、4作品ほどご紹介したいと思います。



三国志知ってる前提で展開する『劉備徳子は静かに暮らしたい』

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引用:http://www.hakusensha.co.jp/ryubi/


少女マンガの定番ジャンルのひとつとして"転生もの"が挙げられます。

「花とゆめ」の白泉社がお得意とするジャンルで、『僕の地球を守って』や『イティハーサ』など、名作も数知れず。

ここ最近は「桃太郎」や「一寸法師」など、誰もが知っている昔話を転生元として使う作品が何故だか増えているのですが、そんな中にぶち込まれてきたのが「三国志」を元ネタとした『劉備徳子は静かに暮らしたい』。

<あらすじ>
魏・呉・蜀の三国時代、信念を胸に戦い倒れた武将達……であったが、なぜか日本に転生!!
しかも、曹操・孫権・劉備は女子高生に!?
武闘派紳士の関羽、物貰いで眼帯の夏侯惇、毒舌イケメンの周瑜などなど…見覚えのある面々に囲まれた劉備徳子は、現世では静かに暮らせるのか――

引用:http://www.hakusensha.co.jp/ryubi/

あらすじからも分かる通り、三国志の武将達が女子高生に転生し、恋に友情にとドタバタ学園生活を送るというストーリー。

そもそも元ネタの存在する転生ものについては、読者がその元ネタを知っているという前提があって成り立つのですが、三国志を知っている女子中高生(メイン読者層)がどれだけいるのか。

さらにそれを美少女に転生させてしまおうという発想のぶっ飛び方。

コンセプトの何から何までやりたい放題です。


しかしその奔放さがプラスに作用しているのか、これが読んでみると面白いから不思議。

武将や家臣たちをモチーフにした個性的なキャラクターが序盤からバシバシと多数登場してくるのですが、きちんとキャラクターの住み分けが出来ており、それぞれが魅力的。

曹操・孫権・劉備のJK三人が抜群に可愛いく、そんな武将を支える家臣達も、かっこよかったり可愛かったり、イケメン選り取りみどり。

なまじ元ネタを知っているとそのギャップに困惑するのかもしれませんが、そこまで深く知らないからこそ受け入れられる面も多少なりともあるのかもしれません。


また極めてテンポも良く、そんな元ネタながらしっかり恋愛要素も落とし込んでくるあたり、抜け目ありません。

何気に学園ラブコメディとして抑えるところは抑えている『劉備徳子は静かに暮らしたい』オススメです。



オッサン系のヒーローは既に二番煎じ『てんちょう、ダメ、絶対』

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引用元:http://cookie.shueisha.co.jp/story/69.html

<あらすじ>
七森は、おじさま好きな女子大生。
冬、凍えそうな七森を助けてくれたおじさまに一目ぼれして、彼のお弁当屋にバイトを申し込むも、なんと彼は16歳の高校生・てんちょう君だった。
年下はないわ~と失恋するが、それが波乱の幕開けだった!!

引用元:http://cookie.shueisha.co.jp/story/69.html

昔は相手役といえば白馬の王子様。

ちょっと前だと、不良っぽい男の子や、セクシーな先生あたりが定番でしたが、今は相手役も多種多様。

地味な男の子はもちろんのこと、メガネをかけたヒーローも少なくなく、オネエ系だってチラホラ…。

そんな中、本作のヒーローは表紙を見ての通り、おっさん。……いえ、実はおっさん顔の高校生だったというオチ。


この見た目、さすがのインパクトですが、ここまでやっても「二匹目のドジョウ」というのが恐ろしいところ。

というのもこの路線には既に『俺物語!!』という偉大なる先駆者がいるのです。

狙ってか狙わずかはわかりませんが、こちらはその流れを汲む作品という分類になってしまうという。


さてそんな本作ですが、読んでみるとこれまた意外と面白い。

正直出オチ感は否めないのですが、その後尻すぼみになることなく、ちゃんと物語として転がっていくのです。

『俺物語!!』はその見た目に反してめちゃめちゃストレートで真剣な青春・恋愛物語を展開したのに対して、こちらは徹底してコメディに倒し、その中にちょっとした恋愛のドキドキを落とし込むという感じ。

シャイで内気なヒーロー・てんちょう君の見た目とのギャップであったりとか、積極的なアホヒロイン・七森結の空回りっぷり、そしてその二人の噛み合わなさがとにかく笑えます。

どちらも一生懸命なだけに、笑いつつも応援してあげたくなる、不思議な魅力のある物語です。



いちご100%の著者が送り出すホモっ気たっぷりの野球マンガ『群青にサイレン』

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引用元:http://you.shueisha.co.jp/lineup/gunjyou.html


週刊少年ジャンプで人気を博した『いちご100%』の作者、河下水希先生は、元々少女漫画家でした。かつてはマーガレットなどで、桃栗みかん名義で作品を掲載し、単行本も何冊か出版されています。

長らく少年漫画で描いていたのですが、15年ぶりに女性向け媒体に戻り送り出してきたのが本作『群青にサイレン』です。

<あらすじ>
小学生の頃、野球クラブのエースを目指していた修二は、空にその座を奪われ、野球を辞めてしまう。
高校の入学式で再会したふたり。
修二は身長が低い空を前に「今なら野球で勝てる」と思い、野球部に入部する。

引用元:http://you.shueisha.co.jp/lineup/gunjyou.html

本作のすごいところは、男主人公というだけでなく、そもそもヒロインが全く登場しないというところ。

主人公はおろか、周りを固める主要登場人物は全員男で、唯一主人公の妹がチョイ役で登場するぐらい。

恋愛要素はゼロで、個性的な男子たちが、それぞれの想いを抱えて野球に打ち込む姿だけが描かれる、純粋なスポーツ漫画になっています。


『テニスの王子様』や『黒子のバスケ』『おおきく振りかぶって』など、スポーツものは腐女子受けが良いのですが、本作はその層にあからさまにリーチしに行った形。

確実に狙っていると思うのですが、全編にわたってホモい描写が多く、恋愛要素ゼロのはずなのになんだかホクホクするから不思議。

特にバッテリー(ピッチャーとキャッチャー)は恋人みたいなものですからね、男同士の恋愛っぽく描くことも、容易かったりするのです。

キャラクターも幅広く、主人公は天才に嫉妬するめちゃめちゃ黒いやつだったり、ライバルが小動物系の可愛い男の子だったり、その他にもクールメガネにアホっぽい明るい先輩、無精髭を蓄えた野暮ったい監督と、お決まりのごとく素敵男子達が選り取りみどりの状態です。


さてこれだけやれば、きっと全国の腐女子たちが放っておくはずがありません。

さぞ売れているだろうと思いきや……


<河下水希先生のTweet>

なんと驚くほど売れていないそうです。

それまで隠していたわけではありませんが、Twitterアカウントは河下水希と桃栗みかんで分けていたりと、きっちりと使い分けをしていたのですが、あまりに売れないために河下水希アカウントでも積極的に宣伝をするように。

今は河下水希/桃栗みかんのアカウントが2つある状態になっています。


ちなみに私は野球経験者なのですが、男性かつ経験者の視点からしても、野球や部活の描写は割りとしっかり描かれており、むしろ驚くぐらい。

でもそういう細かい部分は、女性読者からしたらあまり関係ないのでしょうね。

またスポーツものと括りつつも、描写の中心となるのは、野球での真剣勝負というよりは、チームメイトといかに信頼関係を築くかみたいな部分。

このアプローチは男性向け媒体ではそこまで受けないはずで、女性向け雑誌だからこそ実現している物語構成と捉えることも出来ます。


元々少女マンガは『エースを狙え』に『アタックNo.1』と、スポ根ものこそ王道だったのですが、今ではすっかり下火となり、一年に一作出てくるかという状況。

それゆえに、ホモいとはいえしっかりとスポーツを描こうとする作品は珍しく、是が非でも応援したいと、個人的には思うのです。



作者と編集がそろって頭おかしくなったとしか思えない『ぼくの輪廻』

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引用元:https://www.shogakukan.co.jp/books/09138577


『ぴんとこな』と言えば分かる人も多いのではないでしょうか。

Kis-My-Ft2の玉森くん主演でドラマ化もされた人気作です。

メディアミックスとともに、小学館漫画賞も受賞し、名実ともにCheese!の看板作家となった嶋木あこ先生が、満を持して送り出してきた新作がこちら『ぼくの輪廻』。


それではひとまずあらすじをどうぞ…

<あらすじ>
前世でうっかり僧侶になり、「一生童貞」を誓ってしまった乃木篤朗!
輪廻、それは運命を繰り返すことなのか?
現世でも、漫画家という絶望的童貞クラスタに産まれてしまった乃木は、「童貞でもベッドシーンは描ける!」の信念の元、少年GUMPで新連載を開始する!

ところが、アシスタントにやってきたのが、巨乳の女・花撫!
机に胸を乗せ、キシキシ胸を揺らして作業するカノジョの姿に乃木は衝撃を受ける!
「童貞を誇らしく思っていたが、僕はバカだった。本物を知らなければ、本物の絵など描けない…!!」
漫画への崇高な思いから胸を触ることを決意する乃木!
そこへ、やはり前世からの因縁のゲイ、アキラまで参戦し...?

童貞と巨乳とゲイが一つ屋根の下、童貞は〆切までに漫画を描くことはできるのか

引用元:https://www.shogakukan.co.jp/books/09138577

意味わかんないでしょう?意味分かんないんです。


整理して説明するのは極めて難しいので、キーワードだけ拾ってみると、「おっぱい」「転生」「おっぱい」「お坊さん」「おっぱい」「ゲイ」という感じ。

とりあえず好きな女の子のおっぱいを揉めずに後悔したお坊さんが、転生してもなお、おっぱいという呪縛から逃れられないという、そんな内容。


恋愛要素も一応あるんですが、正直ドキドキやトキメキのかけらもなく、また最近流行りのBL的要素を混ぜてみても、これまた坊主同士の絡みであり、画的にも全く心躍らないという。

これでおっぱいが出てきたら男子の心を鷲掴みなわけですが、乳首はしっかりガードされており、エロいのに何故かがっかり感が強いという、なんなんだこの漫画は……。


あらすじからも分かる通り、巨乳を全面に押し出した煩悩の塊みたいな設定の物語なんですが、そもそもこの作品は何のために描かれているのか、その問いかけがずっと頭に残り続け、だんだんと「この作品は実は哲学的な作品なんじゃないか……」とすら思えてくるようになります。

これを特に恋愛色の強いCheese!でやる意味がわからないですし、そもそも物語がどこに向かってるかもわからない(おっぱいに向かってるということはわかる)というカオスっぷりに、ただただ困惑しかありません。


2017年5月現在で4巻まで出ていますが、こんなテンションでずっと展開。

困惑のままに読み進めております。


とりあえず一読の価値はありますが、別に読んだからと言って、劇的に面白いとか感動するとかってことはありません。

序盤にワッと驚かされ、狐につままれた状態のまま、次へ次へと読み進めていってしまうような感覚。

まんまと4巻まで買わされ、そして5巻も買ってしまうであろう自分がおり、めちゃめちゃ悔しい。


まあ百聞は一見にしかず、今の時代は試し読みという便利なサービスがありますから、まずは読んでみて、そのはちゃめちゃな世界を目の当たりにしてみてください。

読み切ったら悟りが開けるかもしれない、分類不能の、今一番ぶっ飛んだ作品です。



おわりに

以上、4作品をご紹介しました。

王道を外れるということは、それだけのリスクを背負って、漫画家さん(と編集さん)が勝負に来ているということ。

そのチャレンジは少なくない確率で失敗に終わる場合もあるわけですが、多くの失敗の中から、とんでもない新ジャンルの名作が登場したりすることも。


さて今回ご紹介した4作は、名作になるのでしょうか、それとも…。

ともあれリスクを覚悟で勝負しに来ている、漫画家さんの勇気に敬意を表し、本稿は締めたいと思います。


でもやっぱり「ぼくの輪廻」はやりすぎだと思うんだよなぁ……。


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いらっしゃい!今日も色んな情報集めてあるよ!オレももっと勉強して、きみに色々教えられるようにならなきゃね!